認定臨床微生物検査技師制度:新しい時代の認定臨床微生物検査技師像2025(第2版2025年4月1日)
認定臨床微生物検査技師制度(以下,本制度)は2000 年から開始し,良質な微生物学的検査を行って感染症診療を支える臨床検査技師を養成してきました。
この間,認定臨床微生物検査技師(CMTCM)は検査の主軸である検体別検査法に加え,学会や企業と協力し,新規の検査法の啓蒙と普及を先導してきました。
本制度の発足から5 年後には,感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)制度を設置しました。感染対策活動に対する診療報酬の新設と相まって,ICMT は感染制御活動の一翼を担っています。ICMT は認定臨床微生物検査技師の資格取得が要件であり,本制度が基盤となっています。
このように,認定臨床微生物検査技師は臨床微生物学検査の普及と感染制御の充実を支えており,本制度は臨床微生物学検査の専門職集団の育成に一定の役割と目的を達成しているものと認識しています。
医療は高度化と専門性が進行し,各医療専門職が最善の医療を提供すべく結集することが求められます。高い倫理観と社会的責任を持って,検査結果の正確性を保ち,患者や医療に対して責任ある行動をとることが必要です。
このニーズに応えるには,エキスパート(知識と技術を有する専門職)からプロフェッショナル(患者や他の医療職から信頼される専門職)へ進化しなくてはなりません。
そこで,本制度が組織する各委員会の委員でワークショップを行い,これからを見据えた次代の臨床検査技師像の案として以下11 のゴールにまとめました。ゴール1 は望ましい臨床検査技師像,2 は当初のGIO であり,認定臨床微生物検査技師としての普遍的な哲学として継承しています。
この原案は,あり方委員会で更に検討し以下が承認案となりました。
ゴール1
臨床微生物学検査の分野に偏らず,臨床検査全般にわたる基本的な知識と技術(緊急検査項目を含む)を有する。
ゴール2
その時点において実用化されている臨床微生物学検査法に関して最新の知識と技術を身につけている。
ゴール3
微生物学的検査の統一化,標準化を推進し,精度管理され,施設間差がない検査法の構築に寄与する。
ゴール4
コミュニケーションスキルを身につけ診療の流れを知り,臨床微生物学検査を含む臨床検査を適正かつ最大限に利用できる
ように支援できる。
ゴール5
患者および医療専門職と信頼関係を築き,多職種連携によって最善の医療を提供するためのプロフェッショナリズムを身に
つける。
ゴール6
学術集会や研修会へ積極的に参加し自己研鑽すると共に微生物検査室の立ち位置を俯瞰し,継続的な改善活動を指揮するマ
ネージメント力を身につける。
ゴール7
所属する微生物検査室,地域の臨床検査技師および臨床検査技師養成校の教育を先導するリーダーシップを身につける。
ゴール8
診療側の要望や日常業務の中で気付いた疑問を追求する研究心を育み,成果を発信できる。
ゴール9
臨床微生物学検査におけるDigital transformation(DX)として,情報技術(Information Technology:IT)の積極的活用,
および人工知能(Artificial Intelligence:AI)との共生を図りながら効率的な業務体系を構築し,ひいてはワークライフバラ
ンスにも配慮した魅力ある生活環境を創造できる。
ゴール10
感染症および微生物学的検査に関する情報を国内外から収集,発信できる国際力を身につける。
ゴール11
医療分野以外の公衆衛生分野での活動や地域社会における健康増進に貢献することができる。